tach's blog

ここで表明している意見はすべて安井卓の個人的なものであり、所属組織(株式会社MonotaRO、Debian Project など)との関係はありません。

世界はひとつになれないのでしょうか

Brexit と呼ばれる、イギリスが EU に残るか、それとも離れるか、という国民投票が 23 日にありました。イギリス国民は賢いから、メリット・デメリットや先々のことまで考えると残留多数になる、と思っていました。2014年のスコットランドのイギリスからの独立についての住民投票でも残留多数であり、イギリスは理性的で安っぽくない高いプライドを持った人たちが多い、と感じていました。それがガラガラと崩れ去り、呆然としていると同時に、悲しみにくれています。

私は、日本生まれの日本育ち、(外資ではあるものの)日本企業で働き、家族も日本人。ヨーロッパで生活している日本人・現地人両方の友人も少なからずいますが、自身としては直接 EU には関係していません。では、なぜこんなに悲しんでいるのか。それは株価が下がるかもしれないとか仕事しにくくなるかもしれないとか、そういった現実の影響ではなく(こちらも重要ですが)、理性的な判断よりも煽動された(そう、まさに煽動!)ヒステリックな反応と刺激された安っぽいプライドによって、理想が引き裂かれたことに対する悲しみです。

私は、世界はひとつになるべきと思っています。ヨーロッパの統合はまさに壮大な社会実験。Twitter で広がった投稿にもあるように、戦争を繰り返してきたヨーロッパがそれよりもひとつになって協力していこう、という方向は大変だけれども人類にとってより良い方向に進む道だと思っていました。「国 vs 国」から「国々 vs 問題」への転換。そんなヨーロッパが、私は大好きで、尊敬していました。

たしかに、EU は問題がない理想郷である、なんてことはありえません。どんな形にせよ、問題は必ず起きるし、組織が大きくなればなるほど、問題の数も増え、問題も大きくなるでしょう。でも、戦争で人が死ぬよりマシ、変なプライドで喧嘩するよりマシ、それが EU のベースにあるはずです。変なルールの問題だって、移民の問題だって、EU 離脱以外の解決策が出せるはずです。人間の叡智はこの程度ではない。いま目の前にある問題を、短絡的に EU と結びつけて、安っぽいプライドを刺激されながら考えが内向きになり、孤立主義に走る。理想に向かって進んでいたはずが、逆向きになろうとする、まさに折り返し地点のようなイメージです。だからこそ悲しい。地球上の生物で、国境なんてものがあるのは人間だけです。他の動物より叡智があるからこそ、国という概念を作り、人々を護ってきた。それでも護りきれないからこそ、昇華させてさらに高い概念で護ることはできなかったんでしょうか。今はテロとの戦いなど、世界が強調して対決しなければならない問題が出てきているのに、さらに問題を作り出してどうするつもりなんでしょうか。

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まさに、私が感じていたことがほとんどそのままです。世界が内向きになり、孤立主義に向かおうとしている。結果が出てから、ニュースや報道特番では「今後イギリス国民は苦しむことになるだろう」といったマイナスの側面について言及されています。本当にそうなるかはわかりません。なったとしても、酷いありさまにはならないはずです。人間はそこまでバカではない。でも、理想とはかけ離れていきます。もう一度20世紀をやり直すことになるかもしれません。

ちなみに、イギリスの EU 離脱で一番ほくそ笑んでるのは、おそらくロシアでありプーチン大統領でしょう。現実的な脅威は思ったよりも近いかもしれません。